
2025年11月24日、江東区のTOYOTA ARENA TOKYO で、那須川天心(27歳)と井上拓真(29歳)によるWBC世界バンタム級タイトル決定戦が行われた。王座は前王者の離脱により空位だった。那須川はプロボクシング転向後7戦無敗(2KO)で勝ち上がり、初の世界タイトル挑戦。対する井上は過去に世界戦の経験もあり、再起をかけた一戦だった。
多くのブックメーカーが「天心有利」と予想する中、試合前の期待は高かった。スピードと左右のステップを武器に距離を取って戦う那須川に対し、経験とボディワークを持つ井上──両者の対照的なスタイルの対決としても注目を集めていた。
試合展開と勝敗の決め手
試合は12ラウンドで行われ、公式スコアは 116-112、116-112、117-111 の満場一致判定 で井上の勝利。これにより、那須川は公式戦での「無敗記録」がついにストップされた。
序盤、特に第1〜2ラウンドでは那須川が左ジャブやフットワークでリズムを掴み、距離を保ちながら優勢に見えたという報道もある。
しかし、3ラウンド以降、井上が冷静に「距離を詰める」「ボディを効果的に使う」「正確な右ストレート」を軸に攻めを展開。徐々にラウンドを取り返し、判定勝利につなげた。特に中盤から終盤にかけての巻き返しが勝敗を分けた。
また、この試合では WBC の “オープンスコアリング制度” が適用され、4回終了時点で 38-38 の同点、8回終了時点で 77-75/78-74/77-76 と井上がリードという中間スコアが公開されていた。この透明性は試合の流れをファンに鮮明に示すことになり、「井上が確実にラウンドを取っている」ことを見せつけた。

この敗北が意味するもの — 那須川の「初黒星」、そして今後
この結果、那須川の格闘技キャリア(キックボクシング、MMA、ボクシング含む)で 公式戦初の黒星。過去にはキックで42戦無敗、MMA 4戦無敗。ボクサー転向後も 7戦無敗と、華々しい「無敗神話」を築いてきただけに、その衝撃は大きい。
それだけに、この敗北をどう受け止め、どう次に活かすか――が注目される。試合後、那須川は「やってきた全てに悔いはない」と語ったという。決して諦めず、むしろ経験値の差、持久力、技術の細かさ――ボクシング特有の戦い方で敗れた今、改めて“ボクサーとしての地力”を磨く重要なターニングポイントになった可能性が高い。
一方で、井上はこの勝利により、再び世界王座の座についた。兄にあたる井上尚弥も世界王者という家系。復活、そして戴冠――井上の“経験と復権”の物語は、多くのファンに「安定感と安心感」を与える一戦だった。
なぜ「注目されていた試合」だったのか
- 那須川はキック・MMAを通じて圧倒的な実績を持ち、“異種格闘技スター”として強い注目を集めていた。ボクシング転向からわずか8戦で世界挑戦権を掴んだそのスピードと話題性は、日本格闘技界にとっても大きな衝撃だった。
- その一方で、井上は王座経験がある実力者。3度目の世界タイトル挑戦にしての戴冠は、地力と経験、そして試合を重ねる中での適応力の賜物。ボクサーとしての安定感も評価されていた。
- ブックメーカー予想では「天心有利」とされていたこともあり、多くのファン・メディアが“番狂わせ”を期待――ゆえに、結果としての井上の勝利、そして那須川の初黒星は大きな衝撃となった。
結論 — 格闘技界に残る重い足跡
那須川天心の“無敗神話”に終止符を打ったこの試合は、単なる勝敗以上の意味を持つ――。スピードと異種格闘技での実績が必ずしも“ボクシング世界王座”に直結しないことを、痛感させられる試合だった。
一方で、井上拓真のような「地道に積み上げてきた経験と技術」が、王座を獲るための最も“確実な道”であることも示された。今後、那須川がこの敗北をどう糧にするか。あるいはボクシングに留まらず、格闘技界全体でどう巻き返すか――格闘技ファンならずとも、見逃せない“再起”に期待がかかる。
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